非認知能力を高めるには

このブログでは,「非認知能力」について何回か取り上げています.

歴史的に,私たちはペーパーテストなどではかることのできる力を重視してきました.
それは,数値にして比べることができるからです.
これを「認知能力」とまとめることがあります.
これは,数値にして人が認知できる能力という意味です.

しかし近年では,「認知能力」に対して「非認知能力」が重要であるという議論がさかんになってきました.
非認知能力とは,ペーパーテストなどで数値化できないものの,実社会で活躍する人にそなわっている力だといわれています.

その力はたとえば

・方向を決めてそれに集中する力
・あきらめずに試行錯誤を続ける力
・人の対立を調整する力
・信頼される力
・人をまとめる力
・だれかが手伝ってくれる魅力

などです.
いわゆる「やる気」もこの範疇かもしれません.

ペーパーテストの結果がよいだけで,実社会で「いまいち」な人はいます.
お母様,お父様のイメージどおりです.
実社会で活躍するには,理不尽さ,不公平さ,人や組織のままならなさ,人との対立,といった荒波の中で多様な人と連携していかなければいけません.
このとき発揮されるのが「非認知能力」です.

非認知能力は近年注されはじめた状態で,効果的に伸ばす方法は明らかではありません.
何か決まったトレーニングがあるわけでもありません.
多様な研究はあるようですが,まだまだ試行錯誤の状態です.
そもそも非認知能力は「数値ではかれない」というところからはじまっています.
ということは,そこにあるのはわかったとしても,「どのくらい」の力かわかりません.
それをはかろうとする研究はさまざまあるはずですが,どこまで再現性があるかわかりません.
そう考えると,「何をすると」「どのくらい」力がついたかは,今後もわからないかもしれません.
私たちが簡単にはかれる望みもうすいでしょう.
ですので,非認知能力が「伸びる」という安易な宣伝には気をつけるべきでしょう.
それは根拠があるわけではなく,感覚的であり,あるいはただの宣伝です.

非認知能力を伸ばすということは「教育そのもの」であり,正解がないはずです.
あるお子さんにうまくいったからといって,別のお子さんに効果的とはかぎりません.
人の「やる気」をそんなに簡単に引き出せるわけでもありません.

とはいえ,親御さんの責務として,お子さんに非認知能力は是非つけさせたいものです.
ここでは,明確な根拠はないまでも,「よい」と言われていることを中心に,小学校高学年以上で何をするべきか考えてみます.

まず連想するのは「クラブ」「部活」です.
日本社会では伝統的に,就職試験のときに,高校や大学で運動部に所属していたことを高く評価していました.
おそらく,これは根拠がないわけではなく,目標や人間関係のきびしい運動部でやってきたのならば,今でいう「非認知能力」の一部が高い,という経験則からくる判断だったのではないでしょうか.
日本の場合,いわゆる体育会系で,きびしい上下関係の中で仕事をする能力も評価されていたのでしょう.組織の中では,過度にマイペースだと仕事がしにくいでしょうから.(ちなみに「非認知能力」は欧米が発祥で,「目上の人の言うことを黙って聞く」ような考えは含まれていません.

クラブや部活は,さまざまな課題もありますが,それはまた別問題.
集団生活のコツを学ぶために役立つことは確かです.人をまとめたり,人の対立があったりもするでしょう.
つまり非認知能力をつける方法の一つといえます.

ここから分かるように,学校生活をふくめた集団生活をきちんとおくっていれば,非認知能力は自然とつきます.
たとえば,お母様,お父様方としては,これまでお子さんが他のお子さんとうまくいかなかったりしたとき,アドバイスや励ましを繰り返してきたでしょう.その過程で非認知能力はついています.

一言で言えば

可愛い子には旅をさせろ

です.
大昔から,私たちは非認知能力が大切なこと,ある程度放任して子に苦労させ,本人の自主性を高めることが,人の成長に最適であることを経験的に知っているのです.
ただ,近年になって「非認知能力」という言葉が当てはめられただけともいえます.

せっかくですから,学校生活を当たり前に送る以上にご家庭で気をつけることを考えていきましょう.

非認知能力は,一見対人的な力と結びついている要素が多く思えます.
受験の準備は,個人でコツコツと勉強することが多く,他人との関係がうすくなりますし,非認知能力と家庭生活とは関係がなさそうですが,そんなことはありません.
家庭でも身につけられる「ものごとに対する考え方や態度」が非認知能力の基礎である,という考えは多くの研究者がもっているようです.

一般論ではありますが,次のような内容に気をつけてみましょう.

・安易に手伝わない.安易に干渉しない.何かを決めるときは子どもも巻き込む.
・挑戦する態度と過程を褒める.
・小さなことでも,何か達成したことをいっしょに喜ぶ.
・できなかったことを記録しておき,できるようになったことを思い出させる.
・お子さんの能力をけなすことは言わない.問題となった原因や過程を探す.
・失敗したことでも,わざと前向きにコメントする.
・課題があるときは,何が原因か,これからどうすればよいか問いかける.

そもそも子どもは言うことを聞いてはくれません.
高学年にもなれば,言い返してくるでしょう.
親御さんも人間なので,感情的になり,これらの言動ができないことも多いでしょう.
仮に親御さんが最善を尽くしたとしても,相手も人間です.
相応の答えや結果が帰ってくるわけではありません.
だだ,その過程自体も,親子で非認知能力をつけていく糧になっているのだと思います.

中学校以降,お子さんは,さまざまな活動を行いながら,非認知能力をつけていきます.
また,大学によっては力が入れられている「プロジェクト・ベースド・ラーニング(PDL)」(あるいはプロブレム・ベースド・ラーニング,プロジェクト学習,プロジェクト型学習,問題解決学習などともよばれます)という学習プログラムも,非認知能力を身につけるために効果的と考えられています.
これは,ある課題をチームで解決していく活動で,その過程そのものが学習です.
集団の中で自分の得意なこと・そうでないことを自分で認知し,それらをどのように活かし,また他に人に助けてもらうか.人の対立をどのように解決していくか.
このような場面で力を発揮し,その先の実社会でも活躍できる.
そんなお子さんの姿を想像して,前向きに子育てをしていきましょう.