わたしを巻き込みなさい,そうすれば学びます

お子さんには主体的に勉強に取り組んでもらいたい.
それがお子さんが伸びる最もよい方法であり,親御さんと講師の願いです.
ただ,その方法に悩み続ける,という社会人にとっても永遠のテーマと,その解決についての話題です.


今回のタイトルは,ベンジャミン・フランクリンの言葉を引用しています.
フランクリンは18世紀アメリカの政治家・物理学者・気象学者です.アメリカの独立に大きく貢献したことで,合衆国建国の父といわれています.

彼の言葉は次のとおり.

Tell me and I forget.
Teach me and I remember.
Involve me and I learn.

言われたことは,忘れる
教えてもらったことは,覚えている
巻き込まれれば,学ぶ

こんな意味でしょうか.

先日ある講師からこんな話を聞きました.
その方は,集団で第1回目の授業をはじめるときに,オリエンテーションを行うそうです.
「これからみんなでがんばっていこう,その具体的な方法として,授業の30分前には集まって,少し余計に勉強していこう」という内容だそうです.

非常に力のある方で,塾生をいかに「巻き込んで」その気にさせるかに配慮していると語っておられました.
たとえ実質的には講師が決めていくとしても,塾生を巻き込んで,自分ごととして進めていく.
その結果,塾生たちは,お互いに影響し合うプレッシャーもあって,比較的うまく決めたことを守れるそうです.

家庭を例に考えてみましょう.
お子さんの勉強の計画をたてるとき,親御さんが関わることは多いでしょう.
お子さんだけで1週間のスケジュールを決めることは,発達段階上まだ難しい面がありますので,実際に親御さんが加わったほうがよいでしょう.
たた,そのときも親御さんが決めていくのではなく,必ずお子さんに聞きながら,確認しながら進めてください.

「何をしなければならないの?」「どのように進めるの?」「これは全部できる?」「できないときはどうしよう?」

そんなやり取りをしながら決めていきます.
本当にお子さんが決める必要はありません.
基本は親御さんが決めていくのですが,それでも,お子さんに聞いて,それでよいか確認しながら進めます.
そうすれば,お子さんは自分ごととしてとらえやすくなり,決めたことを進められる可能性が高まるでしょう.

さて,先程の講師の方の話には続きがあります.

みんなで早めに集まって勉強する,と決めて,しばらくうまくいくものの,次第に1人減り,2人減り…と,結局一部のお子さんしか残らないのです.
というのがこの方の悩みでした.

これは人間の本質で,どうしても飽きがきます.
たとえ大人であっても,同じことを,それも苦しい勉強をずっと続けられるのは,特殊な才能をもっているか,よほど生活に直結しているケースでしょう.

これを避けようと,親御さん,学校の先生,塾講師は,常にさまざまな努力をしています.
ただ,人間の本質にはそうそう逆らえません.
世の中のダイエット方法といっしょで,もし簡単な方法があれば,だれもがうまくいくでしょう.

その解決方法としては,結局は何度も繰り返しはたらきかけるしかありません.

少しダレてきたと思っても,すぐにしかったりせずに,しばらくようすをみます.
このとき本人もマズいとは思っています.
ですので,再度はたらきかけるにはよいチャンスです.

あるいは,成績が落ちてきたなどのきっかけをみつけたり,塾の講師に手をまわしてきっかけをつくったり,といった,再度はたらきかけるのによいタイミングを見つけるのもよいでしょう.

ただ,それでも他人にはたらきかけるには限界があります.
親御さんとしても最大限の努力をしながら,相手を尊重し,他人は自分にはコントロールできない,という覚悟をもつことも大切なのは,これまでのコラムの〆と同様です.