蒸散を例に対照実験を考える

 

容器(試験管やメスシリンダーなど)に水を入れて,そこに植物の枝をさし,植物から蒸発する水の量を調べる実験です.どの実験とどの実験を比べると何がわかるのか整理します.

 

※前提として,

考えられる実験は次のA~Gです.

実験方法 A

B

C

D

E

F

G

実験方法の説明 葉のついた枝のまま,ワセリンをぬらない 葉の裏にだけワセリンをぬる 葉の表にだけワセリンをぬる 葉の両面にワセリンをぬる 枝だけにワセリンをぬる 葉を除いて,葉のついていたところにワセリンをぬる 水だけ(蒸散の起こらない「ガラス棒をさす」なども考えられる)
もとの水の量 100 100 100 100 100 100 100
一定の時間がたったあとの水の量 80 95 84 99 81 99 100
減った水の量 20 5 16 1 19 1 0

 

次にA~Gの状況を整理するために表をつくります.

ここでは,何もしていなければイキ,ワセリンをぬっていれば✕としています.葉を除いてしまった場合も葉がないので✕です.(ワセリンをぬっていれば✕,何もしていなければ○という表現もあるのですが,その方法だと葉を除いてしまったときに○なのか,✕なのか迷うので,ここでは✕かイキかにしています.)

A B C D E F G
葉の裏 イキ イキ イキ
葉の表 イキ イキ イキ
イキ イキ イキ イキ イキ
減った水の量 20 5 16 1 19 1 0

このような表をつくると,比較がしやすくなります.例えばDとEは,イキと✕の組み合わせが同じなので,同じ実験であることがわかります.

AとBを比べると,A.「葉の裏」がイキているとき(自然のままのとき)と,B.ダメ(✕)になってしまったとき(葉の裏の穴をふさいだとき)を比べていることがわかります.

AとBを比べると,「葉の表」はどちらもイキです.「茎」もどちらもイキです.つまり「葉の裏」という条件だけを比べています.

「葉の裏」がイキているときは水が蒸発していきますが,「葉の裏」をふさいだら水が蒸発していきません.A-Bと考えると,「葉の裏」から出ていく水蒸気は15です.

CとDの組み合わせも,AとBの組み合わせと同じ意味です.「葉の表」はどちらも✕です.「茎」もどちらもイキです.ちがうのは「葉の裏」だけですので,「葉の裏」の水の蒸発を比べることができます.

いきなり比べてはいけないのは,たとえばAとDです.「葉の裏」はイキと✕,「葉の表」もイキと✕です.これは,AとDの水の減った量が,「葉の裏」が原因なのか「葉の表」が原因なのかわからないということになります.