<例題>

次の表は,ある月の「日付」「月の出の時間」「月の入の時間」を表しています.この月は夏ですか,冬ですか.

一見これだけでは「夏」か「冬」がわからないようですが,この問題は,朝太陽が出ているであろう時間に注目します.

たとえば夏であれば4時すぎに日の出です.これをもとに,月の出が「4:20」である3日に注目します.その日の月の入は「18:40」で,月が出ている時間は14時間前後ですね.

このときの月は新月で,太陽と同じような道筋で動くはずです.その月が14時間前後地平線より上に見えるということは,太陽も14時間前後地平線より上に見える,ということです.夏至のころは,太陽が14時間以上見えていますから,つまり,この例題の答えは「夏」です.


月が地平線の上にあって見えている時間は,1ヶ月の間でも大きく変わります.

実際の数値を見てみましょう.(※出典:国立天文台)

 

天文の分野では,一般に6月の終わりを中心に「夏」と表現します.6月終わりに夏至があるからです.

夏の月の「新月」あたりに注目します(月齢ゼロ日付近,黄色の帯).一番右は,月の出ている時間を計算しています.新月のころは,月と太陽が同じ方向に見えて,道筋・出・い入も同じようになります.

その月の出が5時ごろ,入が20時ごろ,ということは,夏の太陽も同じように動いている,ということです.

年が違っても,この傾向は同じですね.


なぜこうなるのか説明していきましょう.

地球の公転する道筋は,下の図のよう面の上にあります.この仮の面を「公転面」といいます.

次に,地球が夏の位置にある場合を考え,地球を拡大します.

月の公転は地球の公転面とほぼ同じです.

次に,地球の上にいる観測者を考えましょう.日本の位置(北緯35°)に観測者がいます.

この状態で,例題のように夏の新月を考えましょう.次の図です.

月と太陽の方向はほぼ同じです.つまり月の出・入を確認すれば,太陽の出・入も同じということです.

ここで,先ほどの月の表をもう一度確認し,今度は6月の満月(月齢15日付近,青い帯)に注目します.

満月のときの「月の出ている時間」は,9時間くらいと,短いことがわかります.

つまり,月の出ている時間は,1ヶ月の中でも14時間から10時間まで大きく変わるのです.なぜでしょうか.これを理解しておくと,月の出・入の時間だけから,季節がわかるようになります.

もう一度次の図で夏の位置を確認して,今度は満月の位置に注目しましょう.

 

観測者から見て,地球が夏のとき,満月の見える位置は低くなるのです.

この地球と月の位置関係で比較してもらいたいのが,次の図です.

冬に太陽が低い位置に見えるのは,地球の地軸の傾きの関係で,太陽とのなす角が低くなるからです.

ここで,「夏の満月の位置」と「冬の太陽の位置」を比べましょう.

 

太陽も満月も高度は同じです.

つまり,夏の満月の出は,冬の太陽のように「遅く」(夏の満月は昼ではなく夜ですが),冬の太陽のように「見えている時間が短い」ということです.

下の表でもう一度確認しましょう.年にかかわらず,満月(月齢15日付近,青い帯)の出ている時間は,冬の太陽のように9時間ていどですね.

 


夏の新月の月の出・月の出ている時間が,太陽と似ているという関係,

夏の満月の月の出・月の出ている時間が,冬の太陽と似ているという関係,

これらの関係は冬では逆転します.

 


12月の同じようなデータを見ましょう.

新月のころ(月齢ゼロ日付近,黄色の帯)に注目すると,月の出ている時間は10時間くらいですね.つまり冬の太陽が見える時間と同じくらいです.

一方,満月(月齢15日付近,青色の帯)を見ると,月の出ている時間は14時間くらいです.つまり夏の太陽が見える時間と同じくらいです.

最後に図でまとめます.まず地球が夏の位置にあるとき.

 

次に,地球が冬の位置にあるとき.

このように,地球が夏の位置にあるか,冬の位置にあるかは,月の出の時刻と,月が見えている時間の長さで判断できるという話題でした.